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人間工学 第36巻 2000年 特別号 p. 318−319

 

温水浴が肩部の筋組織のかたさに及ぼす影響

Effect of bathing on the stiffness of shoulder muscle

西川向一,村上恵子 (東京ガス(株)基礎技術研究所)

Koichi Nishikawa, Keiko Murakami (Tokyo Gas Co., Ltd. Fundamental Technology Laboratory)

1.はじめに

近年、肩こりの主な原因が筋組織の硬化であることがわかりはじめると、肩こり解消法について雑誌やテレビの特集で紹介され、肩こり解消のための機器や薬品も多数販売されるようになった。そのなかでも入浴やシャワー浴は、肩こりを上手に癒しながら共生する方法として、また自宅でできる簡単な方法として取り上げられる機会が多く、注目度も高い。しかし、入浴やシャワー浴と筋組織の硬化との関連を定量的に評価した研究は少ない。

そこで今回、肩こりの主要な原因と考えられている肩部の筋組織のかたさを定量化して筋組織を柔らかくする入浴法を明らかにすることを目的として本研究を行ったので報告する。

2.実験方法

筋組織のかたさを計測するシステムの外観を図1に示す.本研究では先行研究 1)にならい、体表面から5.0センサーを押し下げたときの接触圧を筋組織のかたさと定義して、肩部筋組織のかたさの計測を実施した。

Nishikawa 2000 Figure 1
図1 計測システムの外観

実験は、1998年9月〜10月に実施した。実験条件は、表1に示すような湯温、入浴時間、入浴時の水位が異なる5条件を設定した。この条件1,2,3を比較することで入浴形態の、条件1,2を比較することで入浴時間の、条件1,5を比較することで湯温の影響を評価することが可能であると考えた。被験者は、健康な40才代女性11名であった。実験時間による影響を取り除くため、各被験者が毎日決まった時間に実験を行くようにした。

被験者には、肩部に入浴以外の影響が及ばないように肩ひものない水着を着用させた。水着に着替えた被験者は、前室内30分間の椅子座安静を保った後ただちに入浴を開始した.出欲後は、ただちに乾燥タオルで軽く水分をふき取り、前室内で30分間椅座安静を保ち実験を終了した.肩部筋組織のかたさは、入浴直前、出浴直後、出浴15分後、30分後の4回計測した.計測は、3回づつ繰り返し行い平均接触圧を部位のかたさにした.環境条件として、前室の温湿度、浴室温度、湯音の計測を行った。

表1 入浴実験の設定
湯温 入浴形態 入浴時間
条件1 40oC 全身浴 10分
条件2 40oC 全身浴 5分
条件3 40oC 半身浴 15分
条件 40oC 中間浴 10分
条件 38oC 全身浴 10分

3.結果と考察

浴室内温度は27.2±0.8,前室内温度と湿度はそれぞれ26.8±0.5,52.7±1.8[RH]であった。

入浴形態の違いを比較した結果を図2に示す。

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40℃全身浴10分の入浴では出浴後から15分,30分と時間の経過とともに肩部筋組織が柔らかくなる傾向がみられた。40℃半身浴15分の入浴では,出浴直後は40℃全身浴10分の時と同様に柔らかくなる傾向を示すが,時間経過とともにかたくなり30分後には入浴前のかたさに戻った。入浴時の湯量を全身浴と半身浴の中間にした中間浴では,入浴前から出浴30分後までかたさに大きな変化はみられなかった。この傾向は,筋組織の硬化の原因である乳酸を排除し細胞へ十分な酸素が届くまでのタイムラグが原因であると考えられる。

入浴時間の違いを比較した結果を図3に示す。

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図3より,40℃全身浴5分の入浴では入浴前から出浴30分後まで筋組織のかたさに変化はみられず入浴の影響を受けないことがわかった。この結果は,入浴時間は5分より10分の方が筋組織を柔らかくすることができることを示唆している。

図4に入浴時の湯温の影響を比較した結果を示す。38℃全身浴10分の入浴では、出浴後時間が経過しても肩部筋組織のかたさに入浴前と大きな変化はみられなかった。この結果は、湯温は38℃より40℃の方が筋組織を柔らかくすることができることを示唆している。

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4.まとめ

温水浴が肩部の筋組織のかたさに与える影響を様々な入浴方法を対象に被験者実験から定量的に評価を行った。その結果,温水浴には筋組織を柔らかくする効果があること,そのための入浴条件が明らかとなった。

参考文献

1)浅野新ら:硬さ測定用触覚センサーによる皮膚の力学的特性の計測、日本香粧品科学会誌28(4),336−343,1995.

 

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